『騎士団長殺し』読書感想|現実と幻想が入り混じる、村上春樹ワールドの奥深さ

1. はじめに

今回は日本に帰国した際、ブックオフでまとめ買いした『騎士団長殺し』についてです。
僕は平行して何冊も本を読むタイプなので、結果的に3か月ほどかかりましたが、毎晩寝る前に少しずつ読み進めるのが習慣になり、この「わけのわからない世界観」にすっかり魅了されました。

2. 作品概要

物語の舞台は、小田原にある海岸沿いの山あいにひっそり佇む古い邸宅とひのひかりこの家の近くにある古い井戸。

この時点で結構訳わからないですよね笑
そこに仮暮らしで住む画家の主人公と、谷を挟んで反対側にある豪邸の主である謎めいた大富豪・免色さんという男、そして彼の肖像画の依頼を中心に不思議な出来事が次々に起こります。
上下2巻構成で、前半「顕れるイデア編」は“イデアの顕現”を、後半「遷ろうメタファー編」は“メタファー(隠喩)の再構築”をテーマに展開。

さらに、騎士団長の肖像画を描いた有名画家の個人的な物語や、ヨーロッパの革命運動への言及が絶妙に絡み合い、どこからが現実でどこからが非現実かわからなくなるのが村上春樹的な醍醐味です。

3. 印象に残ったテーマやモチーフ

「イデア」という言葉が物語の至るところで登場するたびに、その捉えどころのなさにドキドキさせられました。
実際に顕れた「イデア」が奇妙な言葉で自身を説明しながらイデアを口にするシーンは、哲学的でありながらユーモアも感じさせ、「村上ワールド」の奥深さを実感させてくれます。

4. 登場人物の魅力と関係性

主人公と免色の関係は、肖像画の依頼者と請負というだけでは全く不十分な、なんとも言い難い不思議な結びつきがあります。
特に、免色の娘かもしれないという秋川まりえとの微妙な三角関係、そしてその伯母である秋川祥子と免色との関係は、各人の内面に隠された欲望や孤独を浮かび上がらせ、物語に深みを与えています。

5. 物語の構成と展開

第1部「顕れるイデア編」では、現実世界に“もう一つの世界”がじわりと染み出すような異質な感覚が続きます。
第2部「遷ろうメタファー編」では、過去と記憶の重層がさらに深く掘り下げられ、人間の内面風景が鮮やかに描かれます。
各部の境界で経験する読後の余韻は強烈で、ページをめくるたびに「何なんだこれ…!」と心の中でつぶやいてしまうほどでした。

6. 総評とおすすめ度

全体を通して、読むたびに異なる風景が立ち上がるような深みのある一冊でした。
村上春樹ワールドの中でも特に“現実と幻想の狭間”をじっくり味わいたい方におすすめです。
読了後は、自分自身の内面に問いを投げかけられ、長く心に残る不思議な読書体験が待っています。


『騎士団長殺し』は、あなたの想像力を刺激し、“読むたびに新しい発見がある”作品です。
ぜひ手に取って、その世界に浸ってみてください。

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